研究概要 |
近年、高齢社会を迎えて、骨形成や骨の栄養に関する研究が日本人の栄養上特に緊急の課題となってきた。一方、難消化性多糖類や少糖類の中にカルシウムを始めとするミネラル吸収を促進し、骨形成を促進するものがあることが報告されている。このような骨代謝に対する難消化性多糖類や少糖類の効果の詳細な検討は、高齢者社会における食生活に非常に有意義であると考えられる。そこで本研究ではまず第一に、難消化性多糖類のうち微生物産生のプルランならびに植物由来のペクチンについて、ラットにおけるカルシウムその他のミネラルの吸収に対する影響、および骨の健康への影響を検討した。その結果、5%のペクチンならびにプルランを飼料に投与した場合、ラットにおける消化管内でのCa吸収、血中Ca濃度、骨量ならびに骨塩量、および骨代謝に影響しないことが示唆された。次に、日常摂取する食品であるタマネギはオリゴ糖が多く含まれ、その骨の健康への影響について関心がもたれる。そこでタマネギによる骨の健康への影響をin vivo, in vitroの両面から検討した。in vivoの研究ではラットにタマネギ食を投与した場合のCa吸収率への影響や骨の代謝ならびに発育への影響を検討した。その結果、玉ねぎの水溶層・残渣いずれにも骨のカルシウム・リンの含有量を増加させる効果を認めた。またそのメカニズムとしては、カルシウムの腸管内での吸収を促進するのではなく、骨吸収を抑制することによるものと推察された。続いて実施した骨細胞を用いたin vitroでの研究では、タマネギに含まれるフラボノイドに着目し、タマネギフラボノイドのケルセチンによる骨芽細胞の増殖、骨形成への影響について検討した。その結果、ケルセチン、ケンフェロールのようなフラボノールにダイゼイン、ゲニステインと類似の、骨芽細胞の骨形成を促進する効果が認められ、これらの結果より、タマネギによる骨の健康への効果が示唆された。
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