小麦粉のタンパク質の約80%はグルテニンとグリアジンで、他の穀類中に含まれるタンパク質とは性状が異なるため、多量の副材料の加わる小麦粉生地で、これらがどのような挙動をしているかは極めて興味深い。そこで今回はモデル実験として、小麦粉(強力粉、薄力粉)に一定量の水、或いはタンパク質分解酵素を含む生姜絞り汁を加えて混捏した場合に生成されるタンパク質の違いを、ローリー法による定量と電気泳動法による分子量の比較から検討した。小麦粉の脱脂処理の有無がグルテン形成に及ぼす影響についても併せて検討した。 粉の脱脂処理及び捏ね水の違いがグルテン採取量に及ぼす影響について粉の50%量の捏ね水でグルテン採取した結果、強力粉、薄力粉いずれも脱脂処理による採取量の影響はほとんど認められなかった。また50%生姜汁を捏ね水とした場合、水を捏ね水とした場合に比べ全般的にグルテン採取量は減少する傾向がみられた。 粉の50%量、3倍量、5倍量の捏ね水で攪拌後抽出したグルテンの0.01N酢酸液抽出試料液をローリー法により定量した結果、加水量を増やした場合、抽出されたタンパク質量は、強力粉からは21、11、9(mg/ml)、薄力粉からは26、5、4(mg/ml)となり、加水量の増加に伴い、薄力粉からのタンパク質量が顕著に減少した。また、50%生姜汁による抽出量への影響は、加水量が粉の3倍量から5倍量と増加したとき減少する傾向がみられた。 強力粉、薄力粉の0.01N酢酸液抽出タンパク質試料液の電気泳動法による分子量分布の比較から、1.3〜8.6ダルトン間に各々12、10点の分布が認められた。これに対して、強力粉、薄力粉から抽出したグルテンからは各々10、7点の分布で低分子量のタンパク質が消失していた。また薄力粉に5倍の50%生姜汁を加水した場合、最も低分子の領域のタンパク質のみがわずかに認められた。現在、高速液体クロマトグラフィーでの分析を検討中である。
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