小麦粉調理において、生地中に形成されるグルテンは製品の仕上がり性状に大きく影響する。そこで、小麦粉を用い、加水量の多い生地(クレープやお好み焼き程度で小麦粉濃度約15〜20%)中でのグルテンの形成機構について基礎的な検討を行った。本年は昨年度得られた結果から、脱脂処理した強力粉に加水量を粉の50%量から5倍量まで加えた生地からグルテンを採取した。これにSDS+2-メルカプトエタノールを加え、45℃下で攪拌振盤することでグルテンの均質液が得られたため、この溶媒で均質液を調製した。更にこれを、20万分子量分画フィルタに加圧下で通し試料液とした。得られた試料液に含まれるペプチド類の分子量と組成比割合の違いを高速液体クロマトグラフィーで分析した。用いたカラムはSuperdex 75 HR 10/30及びSuperdex 200 HR 10/30で、標準物質としてグルテニンとグリアジン(アサマ化成(株)製)について同様に分析し、各々の結果を比較検討した。 その結果、標準物質としたグルテニンはアミノ酸1単位(分子量60)前後のものが最も多く約60%で、アミノ酸6単位(分子量320)前後のもの15〜25%、アミノ酸12〜13単位(分子量800)前後のもの約10%であった。また、グリアジンはアミノ酸1単位前後のもの約60%、アミノ酸6単位前後のもの十数%、アミノ酸12〜13単位のもの約20%であった。一方、調製生地中のグルテンには、分子量の異なるものが4〜6種類に区分された。組成はアミノ酸1単位のものが30〜50%、アミノ酸6単位前後のもの20〜28%であった。加水量が0.5〜3倍量の生地にはアミノ酸230単位前後の高分子のものが十数%含まれたのに対し、加水量3〜5倍量の生地にはごく低分子量のものが十数%含まれていた。これらのことから、加水量の違いにより生地中での、グルテン形成機構が質、量共に影響されることが示唆された。
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