小麦粉濃度15〜20%でつくられるクレープやお好み焼きなどは、調理過程でグルテン形成を抑制する副材料が多量に加えられる。このような状態下でのグルテンの形成機構に閧する研究は未だに明らかにされていない。 そこで本研究はまず、小麦粉に砂糖、鶏卵、牛乳、バター及び少量の食塩を加えてつくるクレープ生地を対象として、各々の材料と調製方法が仕上がり性状の及ぼす影響について検討した。その結果、調製時に良く攪拌し生地を均質にすることはクレープを軟らかく、引っ張りによるのびを良くし、しかも'ねかす'操作を省くことを可能とした。また、加えたバターはクレープの硬さや伸びに関与し、更に生地中に形成されたグルテンがバターによる、油っこさ'をマスクし、生地の硬さを軟らかくしかも伸びやすくすると推察した。次に加水量を小麦粉の0.5〜5倍量に変化させ生地中に形成されるグルテン量を比較した。加水量が増えると共にグルテン量は減少し、3倍以上になると激減したが、5倍量でもグルテンは形成されていた。また、材料として牛乳、バター、砂糖を用いると形成されるグルテン量は減少した。次に、加水量の異なる生地から得られる、'グルテン'の構造、すなわち単位分子量の大小について検討した。抽出したグルテンを0.5%SDS-2メルカプトエタノールに溶解した液を20万分子量分画フィルターでろ過し、高速液体クロマトグラフィーによるペプチド分析を行った。その結果、各々の生地から単位分子量の異なるペプチドが4〜6種類検出された。この組成比はアミノ酸1単位前後の分子量の小さなものが30〜50%を占めた。割合は加水量の多い(3〜5倍)生地の方が、加水量が少ない(0.5〜2倍)生地に比べ多かった。加水量1〜2倍からの組成にはアミノ酸230単位前後の高分子ペプチドが十数%含まれていた。以上の結果から、加水量の違いは、グルテン形成機構に質及び量いずれにも影響を及ぼすことが示された。
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