超高齢化および少子化がますます深刻化するわが国において、個々人の健康管理の上で、骨の健康状態を把握し、健康寿命の延伸を目指すことは、極めて重要な社会的課題である。とくに骨粗鬆症およびそれに伴う骨折予防の上で最も重要な点は、若年期にいかにPeak Bone Mass(最大骨量)を高めておくかであり、骨形成の著しい成長期に骨の健康づくりのための健康管理をいかに身につけるかが重要かつ急務な課題である。本研究は、身体の発育発達の著しい成長期女子の正確な骨の健康状態を把握するための評価基準を検討することを目的としている。本年度は、昨年度に実施したDIP法による骨量測定において撮影されたフィルムをもとに骨年齢を求め、DIP法による第二中手骨および超音波法による踵骨骨量との関連性を追究し、さらには安全性の点で最も優れる超音波法による骨量測定の位置づけ、成長期女子の骨の健康づくりに対する保健指導のあり方等を検討した。その結果、骨評価値に関連する因子では、骨評価の各パラメター別に関連性の強い順に示すと、第二中手骨は、骨年齢(r=0.575)>初経後年数(r=0.546)>体重(r=0.439)>月経の有無(r=0.418)、踵骨OSIは、体重(r=0.368)>BMI(r=0.361)>骨年齢(r=0.348)>初経後年数(r=0.347)、踵骨TIは、体重(r=0.432)>BMI(r=0.408)>初経年数(r=0.360)>骨年齢(r=0.358)を示した。踵骨SOSはいずれの因子においても相関係数は低値を示し関連性は示されなかった。以上より、骨の形成過程である成長期女子においては、皮質骨主体の第二中手骨および海綿骨主体の踵骨の骨評価の各パラメーターによって、また年齢によって、関連する因子の影響の程度は異なる可能性が示された。また、同年齢でも、初潮発来の有無(体重の差がもっとも大きな要因)によって骨評価値は異なることが示された。さらには、成熟度の指標としての骨年齢を加味した骨評価においては、超音波法による踵骨は、成熟度(骨年齢)に比べ体重およびBMI等の体格に関連した因子の方が関連性が強いことが示された。したがって、成長期女子における超音波骨評価は、成長期の健康管理の一環として、非侵襲的であり安全性に優れる方法として有効であること、身体の成長に見合う体格等(適正な体重および初潮発来の有無等)の適正な評価が実施されれば、成熟度としての骨年齢を評価対象に加えることなく超音波法による骨評価を実施することは何ら問題なく、極めて有効である可能性が示唆された。
|