研究概要 |
本研究では、L-ガラクトノラクトンデヒドロゲナーゼ(EC1.3.2.3,GLDH)活性の増大メカニズムをGLDH抗体を用いて酵素タンパク質レベルで解析することおよびGLDH遺伝子を導入したタバコ形質転換植物の解析を目的として研究を行った。その結果、1)ジャガイモ塊茎には総ビタミンC(VC),GLDH活性およびウエスタンブロット法で測定したGLDHタンパク質が存在したが、切断放置すると1日後にGLDH活性およびGLDHタンパク質が最も増大し,VC量は遅れて切断1〜2日後に増加した。酵素タンパク質当たりのGLDH活性(比活性)も切断1日後に増大したので、塊茎の切断によって酵素タンパク質のde novo合成とともに、酵素の活性化が起こることが示唆された。緑豆種子には10mg/100g dry wt.程のVCが存在した。子葉部では吸水後1〜2日でVC量が約2倍に増大し、GLDH活性もVC量の変化と類似したパターンで増加したが、GLDHタンパク質は乾燥種子に十分あり、殆ど変化しなかったので、GLDH活性の増加は酵素の活性化によると考えられた。一方、胚軸部では吸水発芽1〜2日後にVC量、GLDH活性、酵素タンパク質ともパラレルに著しく増大したので、酵素タンパク質のde novo合成によってGLDH活性が増大することが示唆された。 2)タバコの葉にタバコのGLDH遺伝子の中程400bpと3'末端600bpをアンチセンス方向に導入したMAS1(21個体)とMAS2(20個体)およびGLDH遺伝子(2.1kb)をセンス方向に導入したMS(17個体)、GLDH遺伝子のないベクターpMAT037のみを導入したME(10個体)の形質転換タバコ植物を生育させた。MS個体の中にME個体よりVC量が顕著に多い個体は得られなかった。MAS1個体の中にはVC量がMEの60〜70%のものしかなかった。MAS2個体の中にVC量がME体の30%以下の個体が3個体得られた。これらにおいてはアスコルビン酸(AsA)含量が少なくデヒドロAsA含量が多かった。そのうちMAS2-18はGLDHタンパク質もME体の22%と著しく少なかったが種子をつける前に死滅した。
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