近年、食生活の欧米化が進む中で日本型の食生活が見直されている。我が国では、古来より小魚を骨ごと食べる調理が伝承されており、魚の骨は、有用なカルシウムの供給源であり、天然資源を有効に使うためにも、未利用水産資源の利用法を見いだしていくことが必要である。現在、日本では、高齢社会を迎えて、骨粗鬆症など骨の脆弱化にともなう骨折が多発しており、骨粗鬆症の原因ともなるカルシウム摂取量の不足が問題視されている。そこで、日本人に不足しているカルシウム源として魚骨に注目し、魚骨からカルシウムを摂取することについて検討した。 これまでに、魚骨を酢漬処理または加熱処理したときの物性と成分の変化について調べ、これらの処理により魚骨は軟化するが溶出する成分が異なることを報告してきた。本研究では、魚を加熱処理した際の骨中の重要な成分である無機質の挙動について検討した。さらに、高齢者が利用しやすいように、日常、家庭で行われている煮魚について、調味料の添加方法などを変化させたときの魚の物性と成分の溶出との関係を明らかにしようとした。実験はマアジを使用し、クリープメータを用いて魚の破断強度解析を行い、タンパク質はケルダール法により、無機成分はICP発光分析器により測定し、骨アパタイトの結晶構造はX線回折により調べた。魚を調味液中で加熱したときの骨アパタイトの結晶構造については、現在比較検討中である。現在解析中の結果については、各関連学会で報告予定である。
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