研究概要 |
本研究材料である牛乳ホエータンパク賀(主要成分β-ラクトグロブリン)、並びにこれまで取り扱ってきた卵白アルブミンの常温下におけるゲル形成におけるカプリン酸ナトリウム添加の効果を、そのレオロジー特性及びタンパク質2次構造変化の解析を通して明らかにした。その結果、両者のタンパク質はタンパク質濃度8〜16%,カプリン酸ナトリウム2〜4%添加,付加イオン強度0.2,pH75において常温下(25℃)におけるインキュベーションによりゲルを形成することが判った。しかしながら動的粘弾性の増加過程(ゲル形成速度など)には差が見られ、β-ラクトグロブリンのゲル形成はより緩慢に進行することが判った。また、この両者のタンパク質のカプリン酸ナトリウム誘導ゲル形成過程でのタンパク質質二次構造変化を比較考察したところ、共にゲル化中に分子間β-シートの増加が生じていることが判った。しかしながら、スペクトル上には違いが観察された。即ち、卵白アルブミンではゲル形成時にα-ヘリックスの減少、β-ラクトクロブリンの場合には分子内β-シートの分子間β-シートへの変換が観察され、おそらくこの違いは、これらのタンパク質が共に球状タンパク質であるにも関わらず、元来持つタンパク質二次構造含量が顕著に異なっている事と関係しているものと考えられた。更に、常温下でゲルを形成後更に加熱処理を施すことにより、両者ともにスペクトルの変化量が増加した。 これらのレオロジー解析と高次構造解析の結果、カプリン酸ナトリウム誘導によるこれらのゲルは、加熱誘導ゲルに比べよりマイルドな高次構造変化に基づき、より柔らかいゲル物性を発現していることが判った。
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