老人の骨折の原因は骨粗鬆症によることが多く、その予防にエストロゲンの補充療法が有効であると認められている。また最近ではフィトエストロゲンと総称されるイソフラボンの摂取量と骨粗鬆症の関係が注目されており、日本女性に骨粗鬆症の少ないのは大豆食品の摂取量が多いことであるとされている。また動物実験でも大豆イソフラボンがエストロゲン欠乏によって引き起こされる骨量減少防止に有効であると報告している。そこで、本年度はラット由来の培養骨芽細胞株を用いてフィトエストロゲンとビタミンD_3の骨粗鬆症に果たす役割について検討し、以下の結果を得た。骨芽細胞(ROS17/2.8)においてtotal RNAを抽出し、ビタミンD_3受容体のcDNAをプローブとして同受容体の遺伝子発現に及ぼすフィトエストロゲン(ゲニスチン)の影響を検討した。私達はこれまでビタミンD3添加によりROS17/2.8細胞でビタミンD3受容体mRNAの発現が増大することを明らかにしている。さらに今回ROS17/2.8細胞にゲニスチンを10^<-11>〜10^<-7>Mの濃度で添加しビタミンD_3の受容体mRNAの発現に及ぼす影響を検討したところ、用量依存的にビタミンD_3受容体mRNAの発現が増大することが明らかになった。またこの作用はゲニスチン単独でも10^<-8>MビタミンD3存在下でも同様な結果が認められた。この発見は大豆食品に含まれるフィトエストロゲンがビタミンD_3受容体mRNAの発現増大を介し、骨粗鬆症予防に関与していることを示唆している。
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