ヒト及び動物実験でフィトエストロゲンと総称される大豆イソフラポンが、エストロゲン欠乏によって引き起こされる骨量減少防止に有効であると報告されている。本研究では尾部懸垂ラットモデル後肢骨細胞並びに骨芽細胞(ROS17/2.8)の遺伝子発現に及ぼすエストロゲン(E2)、ビタミンD3(D3)とゲニスティン(Ge:大豆種子中に存在するイソフラボンの一種)の影響を検討した。(1)成長期雌ラットの卵巣を摘除後、2週間E2を補充した群(OVX-E2群)と非補充群(OVX群)に尾部懸垂を負荷し、後肢骨のRNAを用いてVDR並びにOCmRNA量をノザンブロット法で定量した。(2)ラット骨芽細胞株ROS17/2.8を10^<-8>M VD3、10^<-9>M E2の濃度で、VD3(-)E2(-)、VD3(+)E2(-)、VD3(-)E2(+)、VD3(+)E2(+)の4群で培養し、12時間後にRNAを抽出して(1)と同様にVDR、OCmRNAを定量した。E2の替わりにGeを用いて同様の実験を実施した。(1)ではOVX-E2群でOVX群に比し、VDRmRNAの発現は増加し、OCmRNAの発現は有意に低下した。このOVX-E2群でのOCmRNAの低下にはグルココルチコイド分泌の増加が関与している。(2)ではVD3(-)E2(-)群に比しVD3(+)E2(+)群では、VDRmRNAの発現は約2倍、OCmRNAの発現は1.5倍に増加した。VDRmRNAの発現はVD3かE2のいずれか一方のみでも発現が増加したが、VD3(+)E2(+)群に比べるとその発現は低かった。一方、OCmRNAはVD3かE2のいずれか一方のみでは増加しなかった。Geでもほぼ同様な結果が認められた。この発見はフィトエストロゲンによる骨粗鬆症予防がVDRmRNAの発現増大を介して関与していることを示唆した。
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