研究概要 |
本研究では阿蘇火砕流と阿蘇4テフラの古地磁気研究に焦点を絞っている。 阿蘇火山は大型のカルデラをもつ複合火山で,約27万年前から約9万年前の間に,阿蘇カルデラを給源とする大規模な火砕流の噴出を含む噴火サイクルが4回(阿蘇-1,-2,-3,-4)あったことが知られている。これらの火砕流の溶結凝灰岩を大分県と熊本県で採取し古地磁気測定を行った。さらに阿蘇-4については,全国の17地点で採取した広域型降下火山灰,および熊本県,大分県,宮崎県,山口県で採取した非溶結の火砕流堆積物についても測定を行った。 溶結凝灰岩の測定からは,それぞれの噴火サイクルで特徴的な古地磁気方位が得られた。阿蘇-1と阿蘇-4はほぼ北向きの通常の正帯磁の方位を示し,阿蘇-2は異常に深い伏角(約70゜),阿蘇-3は大きく東偏する偏角(約35゜)を示すことが分かった。 阿蘇-4ではサブユニット間で古地磁気方位に差が見られ,大分県の阿蘇-4Aと阿蘇-4Bでは4Bの伏角が4Aより約5゜浅くなった。これは地磁気永年変化を反映したものであり,約50年の時間差を示すものである。 阿蘇-4広域火山灰は,サブユニットの阿蘇-4A(や八女軽石流,八女粘土,宇部火山灰層下部など)とほぼ同時期に堆積したこと,そしてこれらの古地磁気方位からこの時期の日本列島の地球磁場には大きな地域差が見られないことが明らかになってきた。
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