研究課題/領域番号 |
12680163
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
今津 節生 奈良県立橿原考古学研究所, 保存科学研究室, 室長 (50250379)
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研究分担者 |
本田 光子 別府大学, 文学部, 教授 (60289642)
豊 遙秋 工業技術院地質調査所, 館長
南 武志 近畿大学豊岡短期大学, 講師 (00295784)
高橋 和也 理学研究所, 加速器基礎研究部・RI技術室, 先任研究員 (70221356)
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キーワード | 朱 / 辰砂鉱石 / 微量元素分析 / 前期古墳 |
研究概要 |
本年度は遺跡から発見される水銀朱の産地を特定するための基礎研究として、以下のような目標を設定して研究を進めた。 (1)日本各地の水銀鉱床から採取した辰砂の分析化学的な特徴や鉱物学的な特徴を明らかにする。 (2)弥生時代・古墳時代の主要遺跡から出土した朱の分析化学的な特徴を明らかにする。 (3)微量元素分析、同位体分析など、産地推定のための有効な分析方法を検討する。 (4)辰砂鉱石から朱を集積する過程における微量元素の変化をつかむ。 (5)遺跡から出土した朱の用途を明確につかむ。 (6)産地の朱鉱石と遺跡出土の朱の特徴を比較検討する。 これまでに、以下のような成果を得た。 (1)北海道、三重県、奈良県、大阪府、和歌山県、岡山県、徳島県、愛媛県、高知県、大分県の水銀鉱床から採取した辰砂鉱石について、ICP-AESを用いた微量元素分析を実施した。 (2)ホケノ山古墳、黒塚古墳、天神山古墳、富雌丸山古墳、小泉大塚古墳、五条猫塚、鴨都波1号墳、島の山古墳、藤ノ木古墳など、奈良県下の主要古墳から出土した朱についてICP-AESを用いた元素分析を実施した。 (3)デジタル顕微鏡による不純物鉱物の特定、EPMAによる不純物鉱物の元素分析、ICP-AESを用いた微量元素分析、硫黄同位体比・鉛同位対比の測定を行った。 (4)朱を集積する過程における微量元素の変化について、ICP-AESによる微量元素分析を実施した。 (5)鴨都波1号墳、黒塚古墳、藤ノ木古墳から出土した朱の用途を明確につかむための調査を実施した。 (6)産地の朱鉱石と遺跡出土の朱の特徴を比較検討した。たとえば、奈良県の辰砂鉱石は、他地域の試料よりも銅(Cu)、亜鉛(Zn)、砒素(As)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)が多く含まれる傾向が明らかに認められた。さらに、奈良県で採取した辰砂鉱石を宇陀地域とそれ以外で比較した場合、砒素、アンチモン、カドミウムは宇陀地方から採取した試料に高い値を示した。また、三重県で採取し辰砂鉱石には砒素(As)が多量に含まれる傾向にあることが判明した。
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