研究課題
基盤研究(C)
古代人の精神生活にとって重要な役割を果たした水銀朱が、どこで採取された原料に基づくものなのかについては、それが天然のものであったか否かを含めてほとんど研究されていないのが現状であった。そこで我々は、遺跡から発見される水銀朱の産地を特定することを目的として研究を実施した。試料 先ず、この目的を達成するための基礎研究として、地質調査所が日本各地の水銀鉱床から採取した辰砂鉱石678点について、分析化学的な特徴、鉱物学的な特徴を明らかにすることを主眼として研究を進めた。さらに遺跡から発見された朱として、弥生時代中期から古墳時代中期(A.D.1世紀から5世紀)に至る墳墓から発見された朱について研究を進めた。測定 辰砂を粉末にして重量を計測し、王水に溶かして分析試料とした。ICP-AES(島津製作所)を用いて微量元素分析を実施した。結果 当初、均一な結晶を形作る辰砂には微量元素の違いはないと思われていたが、実際には辰砂に含まれる微量元素の種類は、鉱山によって類似する傾向を示した。そこで、西日本の主要鉱山である三重県丹生、奈良県大和水銀(宇陀)、徳島県水井、東日本の主要鉱山である北海道イトムカについて、辰砂に含まれる微粒元素を比較した。その結果、各鉱山の辰砂に含まれる微量元素の違いを明らかにすることができた。
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