研究概要 |
本年は身近な光現象の中でいろいろな物が色づいて見えるということに着目して,その物理的理解を深めることを目的に研究を進めた.着色現象がどのようにして生じるかを探るために,異方的屈折率の大きな物を安価な市販品の中から見つけ出すことから始めた.クリアーファイル,セロハンテープといった身近な製品がこの候補であることを見つけ,2枚の偏光板によってこれらを挟むことによって着色現象が見られることを確認した.クリアーファイルやセロハンテープ等は高分子シートの類に属し,屈折率の異方性がある.この種の高分子シートに入射された直線偏光は,互いに直行する2つの直線偏光の和として考えることができる.この2つの直線偏光の位相差が着色現象の原因になっていることを分光によって確かめることができた. 偏光と着色現象との関係を分光器を用いて実験し,その実験結果を整理する過程は,物理的思考を養うことにおおいに役立つと思われる.これを大学のおける学生実験へ発展させる試みを始め,内外の教育シンポジウムでその内容を発表してきた.また,一般者向けには,「青少年のための科学の祭典」でそのデモンストレーションを行なった.そこでは,偏光板にくわえて鏡を使うことによって,着色現象が効果的に観察されることを示して好評を得た.
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