研究開始後、本年度は2年目にあたる。昨年度作成した授業構成の一つのモデルを基盤として、本年度は中学校課程で指導することになっている数学の内容について学習指導案を作成し、それに基づく実践授業を通して本研究の目的に沿った教材と指導方法の開発を行った。取り扱った内容は、中学1年次においては、「正の数・負の数」、「図形と作図」、「条件を満たす図形の作図」、「文字式」、2年次においては、「関数」、「平行線と線分の比」、3年次においては、「円周角と中心角」、「円と相似な三角形」である。合計7つの内容に関してそれらの指導過程に新たな工夫を取り入れた指導方法と教材を開発することができ、それぞれの指導過程には次に掲げるあらたな工夫が盛り込まれている。いずれの指導過程においても課題解決学習の形態を採用している。 「正の数・負の数」、「関数」については、オープンエンドアプローチによる指導過程をとった授業構成である。「図形と作図」、「平行線と線分の比」では生徒が自分で問題をつくる活動を取り入れる、「条件を満たす図形の作図」では生徒自身で資料を読み取り情報を活用する、「円周角と中心角」では作図と紙を切り取る作業とによる操作活動をするそれぞれの工夫を採用した。また、「文字式」、「円と相似な三角形」では、具体的な事例を先に学習し、一般的な内容をその後に学習するような内容の提示の仕方に工夫を採り入れた。これらの授業研究を通して、次のことが分かった。 すでに学習への必要性を動機づける内容を課題自身が内蔵しているもの、また、指導過程の中に学習への必要性を動機づける要因が含まれているものとがあること、さらに、次への学習の必要性を引き出す導入を前段階の指導として組み込むことによって動機づける方法があることが分かった。
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