研究概要 |
遺伝子組み換え食品が出回るようになるに従い,その安全性,表示の問題および環境へ与える安全性についての諸問題が生じている。平成12年度では,遺伝子組み換え食品について,370名の高等学校の家庭科担当教師を対象として意識調査を行った。その結果,遺伝子組み換え食品に対する関心は非常に高く,特にその安全性や表示について関心を示していた。さらに,豆腐製造業者において組み換え大豆(除草剤耐性大豆)の混入を除草剤散布実験により調査したところ,5業者のうち4業者に25-95%の割合で除草剤耐性大豆の混入が予想された。また,現場教師の間では家庭科で組み換え食品を取り扱った教材の必要性を感じていた。 平成13年度ではこれらの教材化の一助として市販されている遺伝子組み換えキットを用いて遺伝子組み換え大豆の有無を検出する方法について検討した。キットはSDI社(USA)が市販しているものを用い,除草剤耐性大豆(GM大豆)が産生するタンパク質(CP4EPSPS)に対する抗体を組み込んだものである。GM大豆の葉や種子からCP4EPSPSを検出した結果,生のものはいずれも検出が可能であった.しかし豆乳を加熱処理することにより抗原性が消失したため,市販の豆腐を用いて検出することはできなかった。これらの実験結果から市販のキットには限界があるので,組み換え遺伝子本体から発現されるタンパク質のCP4EPSPSを純化精製して,ポロクローナル抗体を作る必要性が生じた。脱脂した葉と種子を用いて,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い,組み換え大豆葉と種子の比較を検討した結果,大豆葉のタンパク質ではGM大豆葉の46kDa当たりに通常の大豆では見られない太いバンドが検出された。このバンドがCP4EPSPSに相当するタンパク質であると仮定して純化精製を試み部分精製したが完全に精製できなかった。今後,組み換えタンパク質のポロクローナル抗体を用いてGM大豆の分別を目で見ることのできる教材の開発を進めていく。
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