今年度は、昨年度の大阪の公立工業高校と地域による比較をするために、鹿児島県立鹿児島工業高等学校を対象に調査した。方法は前年と同様にし、対象学科は機械・電気・建築・土木・工業化学の5学科。昭和35/39/44/48/53/57/61/63年3月卒業者2159名を対象とした。回答は377名(回収率17.5%)。その結果、総じて回答者の多くが工業教育を高く評価。学科による相違もかなりある。例えば、建築・土木では、社会での職業と密接に接続し、工業教育への評価も高い。資格取得にも顕著に現れている。電気も概ね同傾向。機械では、就職先が多様で、専門教育と職業との接続関係は明確ではない。工業化学では、さらに拡散。工業教育の専門性を検討する場合、学科毎の個別的な考察も必要である。 個々の特徴点は、(1)就職後の仕事は「設計・製図・見積もりなどの技術的デスクワーク」が非常に多い。(2)中堅の頃の仕事が高校の専門教育と何らかの関係のある人が80%台。(3)高校の専門科目で仕事に役立つと高く評価する点は「専門科目で学んだ理論の基礎」と「専門科目で学んだ実際的技術的知識」であり、「製図で習得した技能、技術的知識」は学科による差が大きい。(4)高校生活の影響は、「具体的な体験を通じて、関連分野の技術的イメージが構成しやすくなった」が1位。(5)就職後の学習は、「仕事をしながら独学で学習し」「内容は学校での専門と異なる内容」が僅かに上回ったが、大多数が追加学習している。(6)取得資格については、建築・土木そして電気が一定の資格にかなり集中。機械さらに工業化学では多様な資格に分散。(7)今後の工業教育のあり方では、「専門教育をもっと充実して行う」「普通教育と専門教育とのバランスをとる」「生徒の選択の幅を増やす」が多い。(8)充実させる教科・科目は、「体験を通して学べる実験や実習」「課題研究」「情報技術」「就業体験」の順で多かった。 4校を総合的に比較すると、公立の3校はほぼ同様の結果となり、地域の相違も認められない。
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