本年度は、事前の文献調査として、保育士養成教育課程での環境教育のあり方について検討するため、各養成校の教育課程改革や教育内容に影響力をもつ全国保育者養成協議会専門委員会が示してきた課題研究報告をもとに、養成教育課程編成の基本にある「保育士の独自性」を整理した。保育士は14の児童福祉施設に配置される最も汎用性の高い職種であり、18歳までの児童を対象とする。また、いずれの児童福祉施設においても保育士としての専門性には「養護」という共通性がある。したがって、保育士養成教育のあり方を考える際にはこの2点を考慮せざるを得ない。これらを念頭に留意すべき要点として、(1)環境教育は必要で、環境保全の行動や自然に親しむ行動などの保育士自身の行動力養成の必要性、(2)児童を視野に入れつつも幼児を中心に据えた環境教育の展開を考える必要性、(3)実践的授業・体験的学習の必要性、(4)幼稚園教諭養成課程との整合性を持たせる必要性とした。これらの要点を基に、保育士養成所教育課程案の実際のカリキュラム上での環境教育の可能性を検討しなければならないが、そのためには、保育士養成にかかわる全教員の意識の中に環境教育の重要性を浸透させ、特に保育内容「環境」を担当する教員の意識水準の向上が望まれる。さらに、保育内容「環境」だけでなく、保育内容「健康」や基礎技能「運動」の領域を越えて自然や野外とかかわり、保育士自身の個人の素養とともに保育の技能の修得ができる科目の設定が望ましい。その他、上の(1)と(3)を満たす科目が選択科目に設定されることが望まれる。これらの課題を達成するには学会活動の活性化や情報共有化のためのネットワーク設立などにより各養成校を啓発する必要性がある。来年度以降は引き続き保育者養成校の教育課程の実態調査を行い、以上の視点が意識されているかどうかを検討する予定である。
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