研究概要 |
平成12年度には,主に,科学者のコミュニティを中心と見たとき,そのネットワークがどのように組織化されているか,科学教育へのリンクが存在するかどうかをフィールド調査し,分析した.具体的には,遺伝子工学を含む植物のバイオテクノロジー研究において,様々な実践のコミュニティの間のリンクがどのように組織化されているかを主には大学における生物工学研究室の実践のエスノグラフィーによって明らかにした. この調査によれば,遺伝子工学の実験は,状況的なものであり,実験プロトコルや論文に記述されている手続きをフォローするだけでは以前の研究の結果を再現することはできない.例えば,高校の生物工学の教科書に載っているような技術ですら,研究室に移植するのに数年を要することがある.このようなことから,技術の移植や研究室間のリンクは,インフォーマルなやり取り,研究室を超えた専門家のコミュニティによって可能になっている. 以上のことは,大学院生を含む大学の研究室のメンバーにとっては,当然のことがだが,科学教育や一般社会の持つ科学についてのイメージとは大きくかけ離れている.また,専門家の方からの科学教育や一般社会とのリンクの要求は強いが,現状では,その機会,方法は限定されたものである.こうしたことから,科学実践と科学教育の具体的なリンクを構築していく方法と道具を探ることが,平成13年度以降の課題になる.
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