本研究は既存のCAIテキスト教材の多用途知的コンテンツ化を目的としたものである。すなわち、人(学習者)が読むことを前提としたテキスト教材に意味的修飾TAGを施し、知的処理と互換が可能なものにする。 例えば、テキストを構成する要素、文、数式、構造式、コンピュータ・プログラム、図、表などの別をTAGで明示することで、それらはコンピュータでも処理可能になる。それにより、文を構文解析して図表現する、数式を展開するなど、学習を知的に支援することができるようになる。 しかし、人が読むことを前提とした既存のテキスト教材に多少の情報を付加して知的CAIで利用するというのはそもそも困難である。そこで、本研究では学習のWorkstationとでもいうべき枠組を設定した。 そのWorkstationは電子テキストと電子ノートを中心とした学習環境で、テキストの内容理解やノートの作成を支援する知的ツールやインタフェースを備えている。そして、その電子テキストとして変換した知的コンテンツを用いる。 そこで、学習者は環境のツールやインタフェースを用いて、テキストの内容を弁別あるいは式を導出するなどしてノートを作成する。すなわち、想定するWorkstationは学習の作業場であり、電子テキストは学習の材料、ノートは学習の作業台としての役割を担う。また、ツールやインタフェースは学習の道具としてそれらの作業を支援する。 本研究では、前述のWorkstationで想定される知的ツール、インタフェースのプロトタイプシステムを開発あるいは設計することで、テキスト教材の多用途知的コンテンツ化の可能性と有効性の検証を試みた。具体的には、診断機能を持つ数式インタフェース、化合物データの参照可能な化学構造式インタフェース、テキストの文の要約でノート作成を支援するツールなどを開発した。
|