本研究は視覚障害者のための高等教育レベルでの教材、特に図的教材の視覚障害者向け適性化と活用支援システム構築のための基礎的研究である。重度視覚障害者のための教材には点字と触図があるが、触図はグラフィック情報であり、1次元の情報ではない。結論としては図も、視覚障害者向けには文字記述形式などへの1次元情報化が推奨されることが示された。 触図についてはセンター試験の点字問題の視覚障害者による解答過程と触察行動を観察した。結果は成績は、図形式へのリテラシィと教科内容についての知識の2要因に影響されることが示唆された。特にグラフ形式についての習熟が、触図の読みとりに大きく影響した。チャートや模式図・地図等の触図は、その形態・内容を比較的容易に触察できた。触図では、触覚で形の認知という問題以上に、その事象についての知識と図の諸書式への習熟、軸の意味理解等が鍵となることが示唆された。このことはキャプション情報で軸説明などを補足すれば、特別な変換を行わない原図に近い触図で対応できるということである。触図にはキャプション等が必須であることも示唆された。 弱視用教材研究には眼球運動測定装置を導入した。図とテキストを含むドキュメントを解読中の眼球運動からテキスト理解に及ぼす図の外的資源機能を探った。弱視者の場合、CRT画面上の文字と図を読ませるという方法では、注視点の記録が困難である場合があることが分かった。さらに眼疾別に適切な拡大提示法を検討する必要がある。 諸外国における視覚障害者への図情報提示の実態調査も行った。スウェーデンでは、視覚障害者用の大学適性試験では図は削除か文による説明に代替された。ドイツでは大学の点訳教科書では、数式や図形はマークアップ言語による線形的記述か言語説明に代替された。図情報もテキスト文と同じくテキスト情報として一元化管理されることが有効であることが示唆された。
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