本研究は、日本における根強く存在する造形美術教育の問題と課題が、研究動機の発端となっている。また、平成14年度からの新学習指導要領の完全実施に伴い他教科と共に「図画工作」及び「美術」の教科の授業時間数が削減されることになった。この教科時間数の限られた中で、我々の教科は、何を求めどのようにすべきなのであろうか。ここに改めて、この教科の意義と教育内容を問い直す必要があると共に、抜本的な教育方法の改善も含めた教科教育の再構築が図られねばならないと考えたのである。 本論では、本質ともいえる教科の意義や目的の明確化をはかりながら、初等教育と中等教育を一貫してとらえることで、この教科の再構築を目指そうと試みた。 第1に、今までの自明のことのようにとらえられ、その実態は、教師個人の教育観に左右されていた造形美術教育の意義を明確に打ち出すために、教科の構造化を試みている。 そこでは、次の4つの重要要素を柱にして構造化を試みてみた。 (1)ビジュアル教育(Sight Recognition Ability Education) (2)イマジネーション教育(Idea Ability Education) (3)クリエイション教育(Creation Ability Education) (4)ビジュアルコミュニケーション教育(Visual Communication Ability Education) 第2に、この教科の構造を基にして、教育計画や具体的な教育課程作成の指針やガイドになりえる教科カリキュラムのガイドの構築を試みている。(詳細については、研究成果報告書にて) 第3に、この教科カリキュラムガイドを初等教育と中等教育の義務教育期間9年間を一貫してとらえるという新しい視点で試みており、教科のバックボーンになりうる造形美術教育の体系化を目指している。 ここで主張している教科の体系的カリキュラムガイドは、題材を並べた年間指導計画や教育課程ではなく、教科の本質をおさえ各校の特徴を生かし児童や生徒の実態に合わせて、教師自身の個性や特性も発揮できるような理想的なカリキュラムが実現されるためのガイド・指針を目指している。 実践的な教育方法での検証が課題として残っており、今後も実証研究を進める。
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