本研究は、平成8年度から平成10年度の3年間にわたり、科学研究費補助金を受けて行った『造形活動における子どもの発達的特性をふまえた鑑賞教育の方法論に関する研究』に続くものであり、前回の研究において今後の課題として残された「発達段階を考慮した鑑賞教育カリキュラムの検討」を中心課題として、先の研究成果を実践の場で試行するとともに、新たな題材開発や授業モデルの作成を行い、小・中学校における9カ年間の図画工作・美術科教育を一貫する鑑賞教育プログラムについて検討することを目的とする。 3年目にあたる平成14年度における研究の内容と成果は以下のようである。 1.研究の内容 研究の初年目及び2年目に開発し、改善を加えた鑑賞題材の授業での試行を、小・中学校に依頼し、小学校8件、中学校9件、計17件の実践報告を得た。それらの報告をもとに、各題材の有効性を評価するとともに、小・中学校における9カ年間の美術教育を見通した、鑑賞教育プログラムの基本構造について考察した。 2.研究の成果 研究を通して得られた新たな知見は、以下のようである。 (1)小学校低学年から中学校まで、内容と方法を工夫することで、児童・生徒の関心や意欲に十分応えうる鑑賞教育が可能であること。 (2)鑑賞と表現とを対立的にとらえる現在の図画工作・美術の教科構造は、児童・生徒の美術への理解を図る上で不適切であり、早急に改善されるべきであること。 (3)造形表現(特に描画)の低迷期といわれる思春期における美術教育の改善を図る上で、鑑賞教育が重要な鍵となること。
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