本研究は、地域の教育力を生かした民俗芸能の指導について、その意義および方法を、全国レベルでの先行事例の悉皆調査およびその分析を通して明らかにしていくことを目的としたものである。 (1)民俗芸能の指導の全国的な状況について 全国の市教育委員会および東京都の区教育委員会すべてと、村教育委員会の一部にあて送付した、第1次アンケート調査「地域の民謡・民舞・民俗芸能の学習に取り組んでいる学校に関するアンケート」では、回答数470委員会のうち具体的な学校名の紹介があったものは280余りで約60%であった。また、学校数を総数でとらえると、小学校570校、中学校163校にのぼった。 これをもとに各学校宛に送付した、第2次アンケート調査「地域の民謡・民舞・民俗芸能の学習についてのアンケート」では、350校から詳細な実施状況に関する回答を得た。 全体として、地域の指導者を迎えた民俗芸能の指導が全国的に展開されている、運動会など学校行事との関連で指導されていることが多い、その主なねらいは民俗芸能の指導を通して地域への関心を深めることにある、学校週五日制に移行することにより活動の存続を危ぶんでいる学校が多いことなどが明らかとなった。 (2)実地調査による事例研究 沖縄県、宮崎県、石川県、宮城県、東京都等から代表的な実践校を選択し実地調査を行った結果、いずれの学校でも学校の教育課程の中心として位置づけられている、地域の全面的な協力が得られている、民俗芸能の実践を通して児童・生徒たちは地域への関心を着実に深めていることなどが明らかとなった。一方、民俗芸能の学習によって表現力を育てるという面については、指導者側にも学習者側にも意識されていないことがわかった。 (3)指針の作成 学校と地域との連携の在り方について、代表的な実践校の例を参照しながらまとめた。また、今後の課題として、民俗芸能を通した表現力の育成をも視野に入れた実践の在り方を示した。
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