近年、学習障害児に対する治療教育の必要が指摘されており、教育プログラムの作成に有効な診断方法の開発が求められている。その中で、注意・記憶因子と共に、継次的処理に関与する実行機能を評価することは、学習障害児の指導計画上、重要である。コンピュータによる記憶・実行機能の評価法として、CANTAB(ケンブリッジ神経心理学テストバッテリ)があるが、言語刺激を用いていない。そこで、本研究では、注意・記憶機能と実行機能を評価する測定システムを作成することを研究課題とした。また、評価に基づく支援を行い、その改善過程を検討することから、教育プログラムの作成に有効な診断方法について明らかにすることを目的とした。 平成12年度においては、注意・記憶課題として、CPT課題、ストループ課題、ハノイの塔課題を作成した。また、学習達成段階を評価するために、漢字達成度の評価システムを開発した。漢字達成度の評価システムは、漢字の描画過程を記録することができる。これにより、注意記憶機能と実行機能の機能水準と、学業達成水準との関連について、個人に即して検討することができ、的確な学習診断と援助が可能である。 平成13年度においては、さらに、ウイスコンシンカード分類課題(WCST)をコンピュータによって評価するシステムを作成する。これによって、学習障害児の指導に有効な評価システムを開発する。また、評価システムによる診断に基づいて、学習支援を行い、その改善経過を検討することによって、評価システムの有効性を検討する。
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