研究概要 |
平成12年度は,研究協力園(上越教育大学附属幼稚園)に在籍する3,4才児が,遊びや生活のできごとを他者と共に相互的・協同的に形成する過程において,造形的行為が認知的・社会的にどのような役割を果たすのかについて,以下の(a)(b)を中心に,できごとを単位とした幼児の日常生活場面の参与的・周辺的観察調査により収集した事例の相互行為分析を通して考察を行った。また,上記の協力園の他に,上越市立ひがし幼稚園,聖公会聖上智幼稚園においても事例収集を実施した。 (a)幼児における環境や事物・事象の理解の形成とできごとの協同形成過程における造形的行為の役割 (b)できごとの相互的・協同的な形成過程における幼児の自他関係の変容における造形的行為の役割 本年度の研究成果は以下のとおりである。(1)遊びのできごと内でつくり表し使う道具の生成過程は,遊びのできごとの生成過程と相互的に生成されていることを分析により明らかにし,その生成的関係単位を幼児の行為に着目して析出した。(2)入園後,幼稚園での生活になじみにくい3歳児園児の遊びのできごとの成り立ち,できごとの成り立ちをつくる造形的表現の成り立ち,そして,この2つの成り立ちを媒介にして成立していく他の幼児や保育者とのできごと内のアイデンティティ(社会的関係)の成り立ちの3者が,相互につくりあう関係にあることを明らかにした。(3)幼児が日常生活のできごとにおいて文字や数字,絵などを描いて(書いて)表す事例からは,他者と共に描き表す過程のもつ意味と,描き表したものを,遊びのできごと内で使用する過程で,それらが果たす意味と機能について明らかにした。(4)幼児が生活環境を自他のできごとにとって有意味な「できごと内の場」として生成していく過程について,できごとをつくり表す行為と,自他が共その行為を繰り返し行うことにより変容していく場所の意味との相互作用・相互行為的関係について明らかにした。
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