研究概要 |
栽培実習教育において灌水は基本作業の一つであり,灌水方法を学生に正しく理解できるように指導することはたいへん重要である.そこで,栽培実習教育を担当する立場から,灌水を科学的観点から把握し,最適な灌水の方法について学習できる実習用の教材を開発する.まず,灌水の指標となる土壌水分を土壌水分センサとコンピュータにより計測する方法を検討した.テンシオメータ(大起理化工業)あるいはセラミックス土壌水分センサ(2124,藤原製作所)による土壌水分張力と,TDR(CS615,Campbell scientific;GP-SS,Environmental sensors)による土壌の体積含水率とをオンライン計測するためにコンピュータのインターフェスとソフトについて検討した.テンシオメータの利用は比較的安価であるものの,土壌が乾燥している場合には水の補給などのメンテナンスが必要であり,長期間の計測にはセラミックスセンサやTDRの利用が優れていた.次に,種々の作物を土壌水分の異なる区を設けて栽培することで,灌水方法を指導するための教材作成に取り組んだ.降雨や地下水の影響を避けるため,ハウス内のプラスチック鉢(4.5MK,兼弥産業)にトウモロコシ,ダイコンおよびホウレンソウを1鉢当たり50mlの灌水量,1,2および3日の灌水間隔で70日間栽培した.灌水間隔が長くなると全ての作物で出芽に遅れが生じ,トウモロコシとダイコンの生育が劣った.一方,ホウレンソウでは灌水間隔の長い3日で生育初期に小さかった草丈が,生育後期には最も大きくなった.このような灌水による影響を生育(出芽,草丈,葉数など)とテンシオメータによる土壌水分張力を含む栽培環境(気温,地温,日射量など)データとして収集するとともに,生育状況をカメラに画像データとして収めた.現在,これらデータによる灌水のための教材用データベース構築について検討を行っている.
|