研究概要 |
栽培実習教育において灌水は基本作業の一つであり,灌水方法を学生に正しく理解できるように指導することはたいへん重要である.そこで,栽培実習教育を担当する立場から,灌水を科学的観点から把握し,最適な灌水の方法について学習できる実習用教材を開発する.前年度に引き続き,灌水の指標となる土壌水分を土壌水分センサとコンピュータにより計測する方法を検討するとともに,新たに土壌水分の可視化を試みた.計測に複数の土壌水分センサを用い,各センサからデータ収集が可能となった.しかし,これらデータによる可視化は,今後の検討課題として残った.次に,サツマイモを供試材料とし,灌水方法の習得に役立つ教材を開発するため,灌水頻度と畝の性状を変化させて栽培した.降雨を避け,ハウス内に1回のかん水量を20L/畝とし,灌水頻度が1日から15日に1回までの5区を設け,苗を植え付けた.生育は,初期に灌水頻度の高い区で良く,中後期に灌水頻度3日および6日で良くなった.塊根乾物重は灌水頻度6日で最も大きかった.以上より,生育ステージに応じた土壌水分が存在し,初期は灌水を多くし,中期以降は灌水を控えることで収量増につながることが分かった.また,露地に設けた標準畝(幅0.8m,高さ0.3m),マルチをした標準畝および平畝(幅2倍,高さ1/2)によって,灌水頻度を変える代わりに異なる土壌水分状態を作りだした.生育はマルチをした標準畝の茎葉,塊根ともに最も良く,茎葉では平,標準畝の順に悪くなり,塊根では標準,平畝の順に悪くなった.土壌水分は標準畝ではマルチの有無に関係なく,同じであり,平畝ではこれらより高くなった.このように,畝の高さを変えることで,土壌水分が変化し,生育も異なることが分かった.しかし,生育は土壌水分だけでなく,マルチの有無などによっても差異が生じていることから,灌水の代替として畝の性状を教材に組み込む場合の工夫が必要である.
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