研究概要 |
本研究の目的は,大学生を対象とした英語学習用マルチメディア教材の,より学習効果の高いプログラム構成を模索し,CALL後の学習効果を実証的に検証することである。前年度までにプロトタイプとなるプログラムの開発および修正を行い,学習履歴を自動記録する機能を追加して実験授業を行うまでに至った。本年度は,プロトタイプとなる教材の続編として,類似トピックで英文の難易度が高いリーディング教材を上級者向けに開発し,応用的な学習がいかに可能になるか,読解の理解度の深さが促進されるか、といった側面を中心に学習効果の分析を行った。これまでの研究では,CALL教材の情報の階層性や映像・動画による情報提示,および反復性や双方向性は外国語学習において特に初級者に有用であると考えていたが,トピックを制限して基本リーディングから応用リーディングへと段階的なタスク設計をし,授業を組み立てることで,中・上級者においても,産出レベルにおける語彙理解が促進されることが明らかになった。 さらに,学習履歴やアンケート調査により,CALLを利用した場合の学習スタイルの個人差の大きさが浮き彫りになった。バランスのよいCALL使用と利用時間の長さ,および自分の学習をモニタリングする力が,学習効果に特に影響していると考えられる。また,CALLを利用したクラスと利用しなかったクラスでは,語彙学習と再生ライティングにおいて,CALL利用のクラスの方が遅延テストにおいても良い結果を出していることから,CALLが学習の定着に役立つことが分かった。 平行して進めていたオーラルコミュニケーションを中心にしたプログラムの開発も終了し,CALL後のスピーチプロトコルデータを収集するに至っている。今後は,スピーチプロトコルを分析し,これまでのライティングプロトコルとの比較を行うなどして,今後ともCALLの効果を多面的に分析する予定である。
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