研究概要 |
本研究の目的は,生徒個々の数学的モデリング能力に応じた数学と理科との総合学習の教材及び実験環境を開発し,その有効性を実証的に明らかにすることである.総合学習「数物ハンズオン」は,身近な物理現象データを簡易テクノロジー(データ収集機[CBL : Calculator-Based Laboratory],各種センサー)で収集し,得られたデータをグラフ電卓で数学的に解析し,最終的には,解析した方程式の物理的意味の解釈を行う.これにより,身近に生じる実現象が授業で学習する数学や物理学に深く関係していることの実感と興味を増大させ,勉学への動機づけと基礎学力の定着を目的としている. 平成12年度〜平成13年度の研究では,グラフ電卓の回帰分析機能を活用した社会現象データの解析,特に得られた関数の妥当性の検討と未来の予測に焦点を当てた教材を新たに実施した.その結果,2年間で6テーマ実施する「数物ハンズオン」の最後のテーマ「お湯の温度の冷め方」実験では,生徒達の数学的モデリング能力,特に,(1)求めた関数の物理的意味を解釈する,(2)求めた関数から実験以外の結果を予測する,(3)求めた関数の妥当性を検討し修正する,といった能力の向上が見られた.さらに,実験で収集したデータを関数で表すことの利点について,学生個々の意識の変容について調査した結果,1年次終了時に比べて2年次終了後の調査結果の方が「利点あり」と答えた学生の割合が増加していた.また,「利点あり」の記述内容においても,2年次終了後の方がより具体的な意見を述べていたことから,実験結果を関数で表すことに関する学生の意識は向上したと考える.
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