今年度の研究計画は(1)日本の複式授業における特徴分析、(2)ブラジルの日本語学校における複式授業の特徴分析を行うことであった。ねらいは(1)(2)を比較することによってブラジルにおける異能力混在クラスの問題点を抽出することである。(2)については現地校の長期休暇中に訪問したため、授業観察に代えて、現地教師との聞き取り調査を行った。本補助金は主としてノート型パソコン購入と国内及び海外旅費に使用され、前者については研究実施中に国内外でフルに活用され、後者については北海道の僻地小学校訪問、ブラジルでの日本語学校訪問に活用した。 (1)については指導内容上の特徴として、同教科指導においては異単元指導と同単元指導に大別され、後者については同内容異程度、同内容同程度が認められた。指導過程上の特徴としては、指導の4段階構造化、「ずらし」「渡り」指導を行って学習の効率化を図っていることである。(2)については、日本語という同教科指導において異単元指導を行っているが、指導内容と指導過程は恣意性が高いことが認められた。ただし、過去に日本人教師により、「ガイド学習」や「協力学習」が試みられ、一定の教育効果をあげたことがわかったが、その後継続して実践されなかった。(1)と(2)の分析から、ブラジルにおける複式授業では、1)年間シラバスの計画化、2)授業過程の設定、3)特に読み書き指導に偏りがちな内容に対して「協力授業」のような異能力合同の会話学習のありかたについての工夫が必要であることが示唆された。 次年度は、本年度実施できなかったブラジル日本語学校での授業観察を行い、上記1)2)3)についてさらに問題点を追究し、異内容指導と異能力合同指導の両様についての方策を提示し、試行検証していく予定である。
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