1.外国人上級学習者と日本人との聴解における語彙理解ストラテジーの違いを明らかにすべく、実証的に研究を進めた。上級学習者の聞き取り困難な語に関して日本人母語話者はどのように聞き取っているのか、プロトコル分析等を利用した調査により明らかにした。聞き取った音から漢字を想起する能力、既存の知識の利用との関係についても検討を行った。 2.学習者の中には、新しい語彙を推測する際に、母語話者が利用している前後の文脈や心内辞書などが十分でないこと、また待遇表現による理解の不十分さから聞き取りにおいて誤解や困難を生じていることが多い。そこで、一人の話し手より発せられた言葉から、男女、身分、仕事、立場の違いなどを即座に判断することが求められる「落語」を上級の聞き取りの素材として取り上げた。実際にプロの噺家に演じてもらい噺の内容理解、関心度の調査を行った。 3.話し言葉における音変化について、困難な点について調査研究を行った。五十島(2001)は、学習者が音変化をどの程度認識しているかの調査を行いさらに日本語レベルとの関係を調べた。平形(2003)は中国人学習者を対象にした無声化の聞き誤りについての調査分析を行った。 4.「入ンな」の「ン」の音が「入りな」から来ているか「入るな」から来ているかなどは、かなりの上級者であっても誤解している学習者が多い。聞き取りで障害となる音のくずれた音変化に関して上記2で得られた理解度調査や学習者の意識調査により、意図的な学習が必要な撥音化、拗音化、無声化の3項目を選定し、教材開発を行った。聴解練習は母語や学習背景により大きく異なるため、個人ベースでの練習が非常に有効である。場所・時間等の制約を受けずに利用可能なWEB化のニーズに応える形でプログラム開発を行った。さらに開発したプログラムを日本語学習者に試用してもらい学習者からのフィードバックを得た。
|