1.本年度の調査の概要 2年目にあたる本年度は、滞在期間を1年から10年に広げて、日本に在日する外国人7名のコミュニケーション規範について、1日調査といわれるインターアクション・インタビュー、およびリコール・インタビューによりデータ収集を行った。さらに、データをもとにコミュニケーション規範とインターアクション管理のかかわりについて考察し、論文にまとめた。 2.新たな知見 (1)コミュニケーション規範が在日外国人の社会的ネットワークの種類と質とに関わって習得されることについて、間接的なデータによる裏付けが得られた。 (2)異文化インターアクションにおける管理のうち、その最終段階にあたる調整行動は、母語規範の維持または抑制に向かう調整、相手言語規範(日本の規範)の習得または抑制に向かう調整、そしてどちらとも異なる接触規範の創造に向かう調整とに分類できることが明らかになった。つまり、インターアクション管理において用いられる調整ストラテジーを選択するに際して用いられる規範のカテゴリーが3つに分類されるということである。 (3)インターアクション管理において選択されるストラテジーは、活用されるコミュニケーション・リソースに制約を受けていることも明らかになった。最も活用されやすいリソースとは参加者に関わるリソースであり、在日外国人は個々のインターアクションに対して主に参加の有無によって管理を行っていた。 以上のように、本年度は十分とは言えないが、調査対象者を増やしデータを収集した。さらにコミュニケーション規範のうち、昨年度の評価段階の規範の分析に続いて、インターアクション管理の調整行動(実現形)に作用する規範について集中的に考察を加えた。来年度は最終年度にあたるため、さらにデータを増しながら、コミュニケーション規範の習得とその運用メカニズムについて報告書をまとめるつもりである。
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