研究概要 |
無視できない非応答(nonignorable nonresponse)を応答変数(従属変数)または共変数(説明変数)のどちらかに含んだロジスティック回帰モデルは1996年からBaker, Chen, Clifford, Fitzmaurice, Heath, Ibrahim, Laird, Lipshitz, Zahnerらによって研究されている。これらの研究で提案されてきたパラメーターの推定方法や標準誤差計算方法においてはパラメーターの推定可能性が考慮されていない。この問題の存在についてはBaker and Laird (JASA 1988)が既に指摘しており、Ibrahim, Lipshitz, and Chenも"ある共変数が選択された場合にこのモデル族に対して推定可能なパラメーターをどのように特徴づければよいのかは不明である(JRSS,B 1999)"と述べている。共変数に無視できない非応答がある可能性を考慮したロジスティック回帰モデルのパラメーターが推定不可能となる事実を指摘したのが研究発表欄に掲げた第一番目の論文である。また応答変数に無視できない非応答がある可能性を考慮したロジスティック回帰モデルのパラメーターが推定不可能となる事実を指摘したのが研究発表欄に掲げた第二番目の論文である。この結果に基づきIbrahim, Lipshitz, and Chen(JRSS,B 1999)の論文のシミュレーションの再現を試みた。その結果、500回の推定可能なケースを作り出すには640回のシミュレーションを行わなければならず、140回のケースでパラメーターが推定不可能となる(22パーセント)という実験結果を得た。なおこれらのケースはいずれも欠損値がなければ推定可能であること、また推定不可能性はデータが観測されたかどうかを表わすインディケーターに対するロジスティック回帰の部分にのみ起こっていることも検証した。EMアルゴリズムの繰り返し計算の過程で尤度関数の形が極値を持たない形に変わって行くためにこのような現象が起こることを確認した。以上の結果をIMS/ENAR 2001 Spring Meetingで発表した。
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