測定値からmeasurement modelを用いて潜在変数(latent variables)を構成し、さらにこの潜在変数どうしの関係を定式化した構造方程式を推定する構造方程式モデルは社会科学における重要な疑問に答える手法として広く認織され、ソフトウエアの普及ともあいまって近年多く利用されるようになっている。特にロンジチューディナルデータにおいてよくみられる欠損値が構造方程式モデルにおいて不完全なデータがある場合の近年の進展についてはAllison(2003)に詳しい。この論文の中でlistwise deletionやpairwise deletionなどの伝統的な手法の限界が指摘され、最尤推定法に基づく代替方法が展開されている。またmultiple imputationについてもその考え方と手法が詳細に展開されている。 本年度はまずこの分野の先行研究の網羅的調査を行うとともに、データを用いてこの方法のもつ推定上の問題点などを探った。これが研究発表欄に掲げた第一番目の論文である。また応答変数に無視できない非応答がある可能性を考慮したパラメーター推定方法を多項累積確率のロジスティック回帰モデル(プロポーショナル・オッズ・モデル)に拡張し、これを日本における自動車のシェアデータに応用して推定不可能性が存在しないことを経験的に確かめた。この2番目の結果が研究発表欄に掲げた第二番目の論文である。
|