研究概要 |
独立成分分析(ICA)や独立因子分析(IFA)のモデル式はx=As+eと表され,伝統的な因子分析モデルと同等である.しかし,潜在因子sが非正規分布で,sの各コンポーネントが互いに独立であるという特徴から,伝統的な因子分析や主成分分析とは様相を異にする.伝統的な因子分析(FA)はAに何の構造も仮定しない探索的分析から,Aに事前情報を設定しそれを検証する検証的因子分析へ,すなわち構造方程式モデリング(SEM)へと発展した.現在のところ,ICAやIFAはAに構造を仮定しない探索的な分析と考えてよく,本研究では,FAからSEMへの発展をにらみながら,検証的ICAやIFAへと発展させることを試みた.具体的な成果を以下に挙げる: 1.SEMの枠組みにおいて特殊因子と共通因子が従属変数へ影響するというモデルが重要であることを指摘した.しかし,同モデルはSEMの枠組みでは識別可能でなく推定できない.このような状況においても,因子に非正規性と独立性を設定すれば,同モデルはAに特殊な構造をもつ検証的IFAとなり推定可能であることが示された. 2.sに非正規かつ独立性を仮定することで,SEMで分析できないモデルも分析できるようになることが指摘された.例えば,正規誤差がどのような共分散構造をもっていても分析可能であり,また,Aに構造がない探索的なモデルで因子数が相等大きい場合であっても(e.g.,観測変数と同じ数),同モデルは推定可能であることが示された. 3.高次モーメントを用いて,非正規の構造モデルにおいて適合度を吟味する方法を提案した.
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