研究概要 |
研究実績の概要は次のようである. 1.毒性試験における最大無影響量No-Observed-Adverse-Effect Levels ; NOAELの決定法について,従来の検定による方法に代わるものとして,Yanagawa et al. (1994, 1997), Kikuchi et al. (1993)によって提案された赤池情報量規準(Akaike Information Criterion ; AIC, Akaike 1973)に基づく手法について再吟味した. 2.上記の手法はパラメータに順序制約を仮定した上で,AICによるモデル選択基準によってNOAELを決定するものである.順序制約下では情報量規準のバイアス補正項が未知であるため,補正項のブートストラップ法による推定法について考察した.この研究の過程で,順序制約下ではブートストラップ法が偏りを生じることが示唆された. 3.本研究と平行して,不完全データに基づく推定に用いられるEM-Algorithmについて理論面,応用面の両側面から研究を行った.理論面では,generalized EM-Algorithmの収束について,Wu (1983)が与えた条件下では必ずしも最尤推定値には収束しないことを示した. 4.EM-Algorithmの応用面として,潜在マルコフモデルhidden Markov modelについて考察した.潜在マルコフモデルに自己回帰の構造を組み込んだモデル,マルコフ過程に2重マルコフ過程を想定したモデルについて比較を行った.その結果,自己回帰の構造を組み込んだモデルがより広範なデータに対して良い推定結果をもたらすこと,2重マルコフを仮定したモデルはそのモデルの複雑さに比してさほど良い結果をもたらさないことなどがわかった. 5.EM-Algorithmによる推定値の精度に関して,観測情報行列observed informatin matrixによる推定値の分散の推定が不可能な場合の推定法について研究を始めた.
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