本研究では、SMP構成のパーソナルコンピュータを複数台、ネットワーク結合することにより、分散メモリと共有メモリの両者のアーキテクチャ的特性を持つSMP-PCシステムを構築し、その上で数種類の典型的な科学技術計算問題に対するハイブリッドプログラミングを行った。用いたPCシステムは4プロセッサ及び2プロセッサ構成のPentium-IIIベースパーソナルコンピュータで、ネットワークは800Mbps Myrinet及び100Mbps Ethernetを用いた。この上で、NAS Parallel Benchmark(NPB)と、多粒子系処理の典型的な例であるSmoothed Particle Applied Mechanics(SPAM)プログラムを用いて、MPIのみによるプログラムとMPI+OpenMPによるハイブリッドプログラムの性能評価・性能解析を行った。評価の結果、MPIのみによるプログラムは多くの場合、ハイブリッドプログラムに対して若干性能が高いことがわかった。この結果に対する解析アプローチとして、各プロセッサにおけるキャッシュヒット率に着目し、その度合いを比較した結果、特にSPAMにおいてはハイブリッドプログラムにおいてキャッシュが有効に働いていないことが判明した。これは、2種類のプログラミングパラダイムを混在させた結果、並列化及び負荷分散の方向性がそれらの間で食い違ってしまうことが原因である。この方向性に一致が見られるアプリケーションにおいては、ハイブリッドプログラムが提供する高い通信性能が有効に生かされ、さらに負荷分散の度合いが高いことから、このプログラム手法が有効であることがわかった。
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