研究概要 |
この研究では、移動オブジェクト(移動エージェント)技術と分散トランザクション技術の融合した新しい分散システムの構成方法を提案することにある。研究初年度では当初の計画に従い、両技術を実現するシステムをJava言語のオブジェクトを対象としながら設計・実装した。前者は移動オブジェクトを実現し、特にコンピュータ間移動に際しては、そのオブジェクトがもつインスタンス変数などの実行状態とともに転送し、転送先ではその実行状態から処理が継続可能になった。後者に関してはオブジェクトの移動性を考慮した分散オブジェクトトランザクションのアルゴリズムを設計した。これは2相コミット方式を基礎とするが、クライアント側におけるトランザクションの不可分実行部分をトランザクションマネジャ側コンピュータに移動・実行させることにより、トランザクション処理時のコンピュータ間通信をオブジェクト移動だけに、通信失敗可能性を最小化し,効率化と耐故障性が向上できる。特に、これは移動オブジェクトの移動性を考慮した初めのトランザクションとなり新規性が高い。これらにより、両技術の問題、つまり前者はプログラム自体をコンピュータ間で移動させて通信コストの低減や耐故障性の向上を可能にするが、分散トランザクションと異なり複数のコンピュータに同時に移動できない。一方、後者は一貫性の維持に大きなコストがかかるが、両者を融合させることによりそれぞれの利点を失うことなく欠点をなくせることがわかった。
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