本研究は、集合演算のアルゴリズムにおいて基礎的問題の一つである選択問題に対して、ゲーム木の探索アルゴリズムを応用することにより、計算量に関する新しい理論的結果を求めるものである。研究対象として特に並列選択問題をとりあげる。本年度は主に、順序集合を2つに分割する基本的な問題をとりあげて、その計算量を調べた。具体的には次の項目に関する新しい結果をえた。 (1)並列比較回数の上界式の導出と改良。 (2)小さいサイズの問題に対する正確な値の決定。 (3)一般的な下界式の導出と改良。 (4)正確な並列比較回数を表す一般式の導出。 ここで、上記1と2のためにゲーム木の探索アルゴリズムを用いて、半順序集合に関するゲームの問題を解いた。この探索アルゴリズムに用いる高速化技法は、主として、表計算の一種である局面表(トランスポジション表)に関する諸技法である。本研究では普通の逐次計算のほかに、パソコンをネットワークで結合したPCクラスタによる並列計算も用いた。このPCクラスタの上で分散共有ハッシュ法を実現して、本研究の探索に応用した。また、本研究では理論的考察により、上記3と4でいくつかの新しい結果を求めた。ここで導入した技法は、研究対象の基本問題以外のいくつかの問題に応用できるので、それらを定式化して計算量に関する部分的な結果をえた。
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