研究概要 |
本研究は,集合演算のアルゴリズムにおける基礎的問題の一つである選択問題に対して,ゲーム木の探索アルゴリズムを応用することにより,計算量に関する新しい理論的結果を求めるものである.研究対象として並列選択問題をとりあげる.具体的には,要素数nに対して,上位t個の集合への分割,第t位の要素の選択,整列した上位t個の選択をそれぞれ求めるための必要十分な並列比較回数U(n,t), V(n,t), W(n,t)を調べる.まず,U(n,t)に対して,一般のnとtに関する新しい上界式を導いた.証明技法として,理論的解析に加えて,新しいゲーム木探索法を実現したプログラムによる結果を利用した.特に,逐次計算だけでなく,分散共有ハッシュ技法を開発して,PCクラスタによる並列計算を実行した.また,同様の証明技法を利用して,Uに関して,特別なtに対する上界式,下界式,正確な値(最適値)を表す式をいくつか求めた.次に,U,V,Wについて,それらの間に成り立つ関係式をいくつか示し,さらに,小さいnに対するU,V,Wのそれぞれに対する最適値を求めた.ここでも,証明技法として,理論的解析のほか,本研究のゲーム木探索プログラムによる結果を用いた.nが16以下である場合のU,V,Wの表において,従来の結果を改良する値の発見を含み,新たに多くの自明でない最適値を確定した.なお,いくつかの項目には上界と下界に差があり,最適値を求めることが今後の課題になる.本研究で開発した探索アルゴリズムは,並列選択以外の問題にも応用できることを実例で示した.
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