分散共同開発に適したソフトウェアプロセスモデルに関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12680339
• 研究機関: 北陸先端科学技術大学院大学
• 研究代表者: 落水 浩一郎 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (10022310)
• 研究分担者: 村越 広享 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助手 (60313706)
• キーワード: ソフトウェアプロセスモデル / ソフトウェア分散共同開発 / チーム構造モデル / 調整支援

研究概要

本研究の目的は、オブジェクト中心の活動およびコミュニケーション中心の活動を融合したソフトウェアプロセスモデルを開発することにより、ソフトウェア分散共同開発に関する研究に理論的基盤を与えることにあった。平成12年度および13年度の研究活動により、チーム構造モデルと呼ぶプロセスモデルを定義した。チーム構造モデルの概要は以下の通りである。
1.チーム構造モデルは、役割、役割の責任範囲、役割間のコミュニケーションリンクの3組からなるモデルである。ここで、役割とは、ソフトウェア開発や開発管理に関する活動の集合である。役割の責任範囲とは、役割集合の要素である活動の操作対象(プログラムやソフトウェア図面)の集合である。役割間のコミュニケーションリンクとは、ある役割に含まれる活動と別の役割に含まれる活動の間のリンクである。
2.上記モデルにしたがって、分散共同開発支援に必要な下記の各機能を開発した。また、プロセス中心の統合環境を設計し、一部実現した。
2.1版管理システムのログ情報に統計的処理を施し、プロジェクトの進捗状況を抽出する機能を設計実現した。
2.2一群のメールを会話分析手法により解析し、話題毎の討議の流れを自動抽出するアルゴリズムとシステムを開発した。また、討議の流れ毎にその要約を作成するアルゴリズムとシステムを開発した。コミュニケーションリンクの属性情報として利用する。
2.3責任範囲の積集合として定義される共有情報空間において、ある変更にともなう影響を関係する役割に通知する機能を実現した。また、責任範囲が複数の計算機にわたる場合の複写制御機能を設計した。
2.4責任範囲集合の要素間に設定された依存関係をもとに、変更作業のためのワークフローを複数個自動生成する機能、および、ワークフロー間の競合を調整する機能を設計した。
3.上記チーム構造モデルを内蔵し、実世界における作業状況を設定された抽象レベルでシミュレートすることにより、漸増的矛盾解消を支援するプロセス実行エンジン、アクティブコーディネータを設計した。

研究成果

• [文献書誌] 落水浩一郎: "ソフトウェア分散共同開発のためのチーム構造モデルの定義と調整支援への応用"情報処理学会ソフトウェア工学研究会. 2001・SE・131・1. 17-24 (2001)
• [文献書誌] H.Murakoshi, T.Yamami, A.Shimazu, K.Ochimizu: "Multi-Party Deliberation Structure Using Mailing List in a Cooperative Work"Proc. of 19^<th> International Conference on Computer Processing of Oriental Languages. 359-364 (2001)
• [文献書誌] 村越広享, 島津明, 落水浩一郎: "メーリングリストを利用した共同作業における討議構造の自動構築法"コンピュータソフトウェア. 18.3. 19-23 (2001)
• [文献書誌] K.Ochimizu, H.Murakoshi, K.Fujieda, M.Fujita: "Sharing Instability of a Distributed Cooperative Work"Proc. of the ISPSE, IEEE Press. 36-45 (2001)
• [文献書誌] Hiroyuki Murakoshi, Akira Shimazu, Koichiro Ochimizu: "Construction of Deliberation Structure in E-mail Communication"International Journal of Computational Intelligence. 16.4. 570-577 (2000)
• [文献書誌] 藤田充典, 藤枝和宏, 落水浩一郎: "オープンソース開発におけるプロジェクトモニタリング手法"ソフトウェアシンポジウム2000論文集. 126-130 (2000)