研究概要 |
本研究の目的は,移動コードを用いて構成される,適応性を備えた分散ソフトウェアシステムを,効果的に開発するための技術の提案である.具体的には,コードの移動や,それにともなうコードの実行環境の変化などにかかわる非機能的要件(mobility aspects)を対象としたモジュール化機構を提案する.本年度の成果は以下の通りであり,全て査読付の国際会議で発表している. (1)自己反映計算にもとづく,移動エージェントの耐故障動作を対象としたモジュール化機構を提案し,そのプロトタイプの実装を行った.耐故障動作は非機能的要件のnon-trivialな具体例であるが,特に移動コードを用いるシステムではモジュラーな導入が難しいとされている.我々は以前に提案したhybrid group reflectivearchitectureを用い,個々のエージェント,およびエージェントとノードに関する耐故障動作のモジュール化機構を設計し,Java上のアプリケーションフレームワークとして実装した.本フレームワークに基いて実現されたエージェントは,何種類かの非ビザンチン障害に対応することが可能となった. (2)また,我々はこれまでに動的適応支援するソフトウェアモデルDASとその記述言語LEAD++を設計・実装してきた.今回,我々はDASによる動的適応をより簡潔に記述するための枠組として,LEAD++による動的適応可能なコンポーネントウェアの実現を試みた.具体的には,コンポーネント間の構成と各コンポーネント内部の振舞いのそれぞれを,実行環境の状態に応じて動的に変更することで,動的適応可能なコンポーネントウェアを実現する.
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