研究概要 |
本研究ではソフトウェア開発における効果的なプロジェクト管理法の提案を目指して,プロジェクトの混乱状態を早期に予測し,その回避策を提示するモニタリングシステムの開発を進めている. 本年度は,前年度までに確立した混乱予測手法に基づいて混乱プロジェクトと判断されるプロジェクトに対して,その判断の根拠を提示する手法について検討した.具体的には,混乱プロジェクトを特徴づけると考えられるコスト超過や期間超過が発生しているかどうかをアンケート結果から判定する.提案法ではできるだけ多くのリスク要因を考慮に入れるために,まず因子分析を用いてリスク分析アンケートの項目を再編成した.次に重回帰モデルを組み合わせて適用することによって,コストや期間についての予測を可能にしている.得られた最大の成果は,混乱すると結論づけられたプロジェクトの開発者やマネージャに対してなぜ混乱すると判定されたのかその理由を説明できる様になったことである.実際の開発現場から収集したデータを使用した適用実験の結果,提案手法で得られたコストや期間の予測値が実際の値に非常に近いことを確認した.この成果は2001年12月に香港で開催された国際会議the 2nd Asia-Pasific Conference on Quality Software(APAQS2001)において発表し,高い評価を得た. 同時に,開発現場で行われるリスク評価や具体的なリスク回避策に関するデータを収集するためのソフトウェアシステムを開発中である.このシステムでは個別のプロジェクトごとにリスク要因を抽出・評価することができる.更に,そのリスク要因を一定の間隔で追跡しながら,プロジェクトが混乱するのを回避(あるいはリスクを軽減)する作業を支援する.現在,このシステムのプロトタイプをある開発組織で運用する準備を進めており,WWW上で動作させている. 今後の予定としては,上で述べたシステムから得られるデータをいかに効率よく現場にフィードバックさせるかについて考えていく.
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