研究概要 |
本研究ではソフトウェア開発における効果的なプロジェクト管理法の提案を目指して,プロジェクトの混乱状態を早期に予測し,その回避策を提示するモニタリングシステムの開発を進めている.本年度は,前年度までに確立していた回帰分析に基づく手法の成果を踏まえて,より実用的な手法への改善を試み,モニタリングシステムの完成を目指した. まず,従来の回帰分析に基づく手法での課題であった,一部のリスク要因のみしか利用されないという問題を解決するために,クラスタ分析によりプロジェクトの混乱状態を予測する手法を新たに提案した.提案手法では,プロジェクトのリスク要因を分析するために作成されたリスク分析アンケートへの回答の類似性を幾何学的距離により判断し,プロジェクト全体を「混乱」と「成功」の2つのクラスタに分類する.次に,新たなプロジェクトでアンケートに回答した結果がどちらのクラスタに近いかを計算することで,そのプロジェクトが混乱するかどうかを判定する.一般的に言ってプロジェクトの進行に伴ってリスクが変化すると,各クラスタへの距離も変化する.従って,今回開発した手法によってプロジェクトが危険な状態にあるのかどうかを定期的にモニタリングすることが可能となった. 本研究で提案してきた回帰分析に基づく手法とクラスタ分析に基づく手法の2つを,アンケートの収集システムと統合して,混乱の予測と回避を行えるモニタリングシステムのプロトタイプの開発を行っている.現時点では,データの収集と2つの手法に基づく混乱予測を実施することが可能である.今後,リスクの定期的な追跡やその時点でのリスク回避策を提示する機能を付加することで,より実用的なシステムへと発展させる予定である.
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