平成14年度においては、移動型並行計算系のモデルとして線形論理の体系を用いたモデルについて研究を行った。特に動作中のプログラムのソースコードが外部からの操作により動的に変更される場合について、その動作が線形論理のシークエント計算における推論の組み合わせによって記述されることが従来より知られているが、このように推論によって記述された動的変更の機能が、あらかじめ変更後の動作をプログラムとして備えている場合と等価なプログラムを与えることを示した。 また、線形論理によって記述された分散処理系においては、各サイトによって通信の際に用いられる名前の有効範囲を明確にすることが重要である。平成14年度においては、複数の名前の有効範囲は入れ子状にならない場合で、しかも各名前の有効範囲が単一のサイト内に包含されずに、複数のサイトにまたがる場合に対して、その有効範囲を複数の名前について同時に正確に記述する方法を提案した。この新たな方法は従来提案した手法に比べ、冗長な記述を含まず、複数のサイトの合成操作を容易に記述することができるものである。
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