研究概要 |
インターネットの急速な利用拡大に伴い,さまざまなサービスを行うネットワークサーバの役目が重要になってきている.これらのサーバを実現するための従来の方法は,サーバの用途や使用環境に合わせて個別にソフトウェアを構築することで,利用者の増加や使用形態の変化に伴ってサーバの機能を拡張したり,変更したりすることが極めて難しかった. 本研究の目的は,このようなソフトウェアをブロック建築のような手法で簡単に実現することと,使用環境の動的な変化に対応して,ソフトウェア自身が動的に環境に適応する枠組みを作り上げることである. 今までの研究によって,システムの機能を細粒度オブジェクトとして表現すると同時に,自己反映計算の機構を用いたメタレベルアーキテクチャを採用することで,Webサーバのような通信端末システムを比較的大きな自由度を持たせて実現することができるようになり,例としてOpenWebServerを実現した.しかしながら,この機構を用いても環境や使用状態が変わったときには,人間がシステムを再構築しなければならず,まだまだ大きな労力を要していた. 本年度は,生体の免疫機構を工学的に模擬することによって,外界の変化に対する自律的かつ動的な適応を実現する手法について研究し,人工免疫ネットワークを用いた方針決定エンジンであるiNexusを実現した.iNexusは,OpenWebServerの動作を監視しつつ,時々刻々と変化する状況に応じて,より好ましい方針を自律的に選択し,動的にシステムを再構成する.OpenWebServer/iNexusをWebへの閲覧要求負荷生成器を用いたベンチマークによって評価し,負荷の変化に対応してサーバが動的に変化することを確認した.また,そのとき強化学習と同様の効果が得られることが明らかとなった.
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