本年度は、動的に変化する環境に適応可能な分散オペレーティングシステムの主な構成要素について、以下の4項目を中心に検討し、実際にプロトタイプを開発して性能評価を行った。また、その結果の一部を学会の研究会などで発表した。さらに、本年度の研究成果を2編の論文として学会の論文誌に投稿中である。 1.資源の抽象化機構に関する研究 アプリケーションに対して一様な処理環境を提供するために、メモリ、プロセッサ、デバイスなどの各種システム資源を抽象化し、これらを位置透過に使用できる環境を実現する機構を構築し、性能評価を行った。 2.分散仮想記憶の実現方式に関する研究 ネットワークに接続された計算機のメモリ資源を分散仮想記憶として抽象化するための方式に関して検討した。さらに、オペレーティングシステムがネットワーク透過にそれらのメモリを管理する方式についても検討した。 3.負荷分散の処理方式に関する研究 複数の計算機の処理を均衡化させる負荷均衡のための機構と、処理が集中した場合の対応策としての負荷分散の機構について検討した。負荷分散に関しては、プロトタイプを実装し、実現可能性及び容易性を示した。 4.ファイルシステムの開発と評価 本オペレーティングシステム上で動作するファイルシステムを構築した。これにより、デバイスレベルのみならず、アプリケーションレベルにおいても資源を位置透過に使用することが可能であることを示した。
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