本研究では、環境の変化に適応可能な分散オペレーティングシステムの新しい構成法について検討した。本研究では、まず、互いに異なる環境を持つ複数の計算機を管理するために、計算機資源の抽象化手法について検討した。さらに、本手法に基づいて実際にオペレーティングシステムを開発し、種々の評価によってその有効性を示した。本研究における具体的な成果は次の通りである。 1.分散仮想記憶の実現手法 ネットワークに接続された複数の計算機上のメモリ資源を抽象化するための手法を開発した。さらに、本手法により、すべての計算機から位置透過にアクセス可能な分散仮想記憶が実現できることを示した。 2.デバイス管理手法 複数の計算機上の周辺デバイスを抽象化するための手法を開発した。本手法は、各々のデバイスの位置に依存することなくデバイスを操作可能とするものである。本手法によって、オペレーティングシステムはデバイスを位置透過に管理することができる。 3.効果的な資源の利用法 システムの負荷を監視し、それに基づいて、各プロセスが動作する計算機を決定するための負荷均衡の機構を開発した。 4.アプリケーションの開発とシステムの評価 いくつかのアプリケーションを実装し動作させることによって、本システムの評価を行った。具体的には、ファイルの読み出し処理において、プロセス、カーネル、ディスクドライバが位置透過に動作することを確認した。さらに、我々の手法によつて、効率的なファイルシステムが実現可能であることも示された。
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