研究概要 |
既存の情報から新たな情報を得るためのシステムを,強固な理論的に裏付けに基いて開発することが本研究の目標である.そのために,既存の情報を背景知識,必要な情報を事実,背景知識から演繹的に説明する理論(仮説)と捉え,仮説の発見過程を論理的な推論の形でコンピュータ上に実現する.知識表現言語として有用であることが広く認識された節論理を採用する. 本年度の研究実績は,(1)証明補完という独自に考案した論理的な推論を用いて仮説発見を論理的な行為として定式化し,(2)Darmstadt工科大学で開発された連結証明法という自動証明技法と節論理の基礎となるHerbrandの定理を用いることにより,証明補完は残余仮説の構成として実現できることを明らかにした.さらに,残余仮説の一般化手法を考察することで,(3)仮説発見を論理的な行為とみなすことは,ある適当な残余仮説を一般化することに過ぎないことを証明した.その結果,これまで帰納推論や学習,アブダクションなど人工知能分野で開発された様々な仮説発見手法は「残余仮説の構成とその一般化の組み合わせ」の一形態にすぎなくなったが,しかし本研究では同時に(4)それらの仮説発見手法は,「残余仮説の構成とその一般化の組み合わせ」をそれぞれ独自の方法で効率化したものであることをも示し,これまで個々ばらばらであった仮説発見の世界に,統一的な視点を与えることに成功した.すなわち「残余仮説の構成と一般化の組み合わせ」は仮説発見手法の正当性や効率,能力を記述する手法としてふさわしいものである.本研究の来年度以降の展開もそれを柱にする計画である.
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